猫エイズを発症させない!腸内環境の健全化で免疫力低下を防ぐ!
ツイート飼い猫が猫エイズだと知らされたら、多くの人が驚き、悲観すると思います。どうしよう・・・と途方に暮れてしまう飼い主さんも多いでしょう。
エイズという病名の与えるインパクトはなかなかですから仕方がないです。ただ、この病気については具体的にあまり知られていないように感じます。
今回は猫エイズとはどんな疾患なのか、その原因と感染経路、起こる症状について、そして感染猫の健康管理について紹介します。
猫エイズとは?感染しただけではエイズではない?
一般に猫エイズと呼ばれるこの疾患は正式には「猫免疫不全ウィルス感染症(FIV)」といいます。FIVはFeline Immunodeficiency Virusの略で、Feline(猫) Immunodeficiency(免疫不全) Virus(ウィルス)です。
このウイルスに感染すると免疫力が低下し、さまざまな病気が引き起こされます。これらの疾患を総称して猫エイズと呼びます。
なので厳密にいれば、FIVによって引き起こされる疾患が猫エイズであって、感染しているけれど発症していない場合は単に猫エイズキャリアといって区別する必要があるのです。
FIV感染から猫エイズ発症までの経過は?
ウイルス感染イコールエイズではないと何度も説明する理由は、感染した猫が100%エイズを発症するわけではないからです。免疫力が徐々に低下していくことは事実ですが、発症しないまま寿命を全うする猫も少なくないといわれます。
まず、このウイルスに感染するとどんな症状があらわれるのか、ステージごとにみてみましょう。ただ、ヒトの場合は現れる合併症の指標がありますが、猫の場合は現在のところないので、あくまで目安として参考にして下さい。
- 急性期-感染直後の数週間~数ヶ月にみられる一時的な症状
- 無症状キャリア期-見た目では健康な猫とかわらない状態が数年続く
- PGL期-全身のリンパ節が腫れる(症状のあらわれない猫も多い)
- エイズ関連症候群-口内炎・貧血・皮膚病など目に見える症状があらわれる
- エイズ発症期-免疫力がなくなりありとあらゆる病気の発症が起こりうる、日和見感染がみられる
こうして並べると、感染猫がみなこのような経緯を辿るように思われがちですが、決してそうではないことを知って欲しいと思います。
確かに、いったんエイズを発症してしまうと、あとは坂道を転がるような速さで状態は悪くなって数ヶ月のうちに死亡してしまう恐ろしい病気ではありますが、たとえ感染したとしても寿命が極端に短くなるわけではないという疫学調査がたくさん出ています。
FIV感染(猫エイズキャリア)と寿命
愛猫が猫エイズキャリアだと知ると、まず頭をよぎるのが「長生きできない」という不安ではないでしょうか。そこで、2006年にアメリカで開催された国際ネコレトロウイルス研究シンポジウムで発表された有名な疫学調査を紹介します。
フロリダ大学が発表した調査結果です。動物病院に来院しウイルス検査を受けた猫67,963匹を対象に生存率を調べたものです。結果は以下の通りでした。
- FIV陽性で診断されてから1年以内に20%が死亡(未発症ネコの安楽死を含む)
- それ以降はFIV陽性と陰性では生存率に有意差はみられない
1年以内の死亡に関して考えられることは二つあります。すでに発症した段階で来院した子が死亡したことと、飼い主によって安楽死が選ばれたからということです。
また、上記以外にもドイツやオーストラリアの疫学調査でも、FIV陽性と陰性の猫の平均寿命には大きな差が認められないという結果が出ています。
猫エイズの感染経路は?飼い主ができる予防法は?
このウイルスは感染猫の唾液や血液に存在します。ただ、感染力は猫白血病ウイルス感染症(FeLV)ほど強くないので、食器の共有や母猫が子猫を舐めるグルーミング程度では移りません。
FIV感染の一番の原因は噛まれること
感染となる一番大きな原因はズバリケンカ!です。FIVに感染した猫に噛まれることによって、血液中にウイルスが侵入することで感染します。
ヒトのエイズ感染は性交渉が大きな要因と言われていますが、猫の場合は性交渉そのものより、行為時に雄が雌の首を噛む(ネックグリップ)によるものだと言われています。
また、母子感染については実験室では感染ルートとなり得るという結果が出ていますが、自然界では稀なケースです。母猫がFIVキャリアであっても産まれた子ねこは感染していないことがほとんどです。
FIV感染リスクの高い猫の特徴
一番多い感染リスクは猫同士のケンカなので、そういった状況に遭遇することが多い猫にリスクが高いことは明白です。他の猫と遭遇しやすい環境にいる猫はそれだけ高リスクなのです。
実際に、疫学調査の結果でも
- 未去勢の雄猫
- 外で暮らしている猫または外飼いの猫
これらの猫の陽性率が高いことが報告されています。
最良の予防策は避妊去勢手術と完全室内飼い
FIV感染を防ぐには、感染猫と接触させないことがベストです。万が一家の外に出てしまっても、避妊去勢手術をすることで雌は発情を100%抑えられるのでリスクもぐっと減ります。
雄も雌をめぐっての死闘を繰り広げることもほぼ無くなるので、ケンカによって流血することも減るでしょう。それでも、やはりFIVだけでなくさまざまな感染症予防のためにも完全室内飼いを強く推奨します。
避妊去勢に関しても同様です。
猫エイズを発症させない!無症状キャリア期を上手に過ごすコツ!
感染させないことが一番ではありますが、保護した猫がキャリアだったということもありますし、FIVに感染していると知って里親になる人もいるでしょう。
何度も書いているように、FIV感染したからといってすぐに命にかかわることが起きるわけでもなく、寿命が極端に短くなるわけでもありません。
感染後の急性期を過ぎて無症状キャリア期に入りますが、その期間は一般に2~4年といわれていますし、飼育環境によっては5年といわず10年以上も発症せずに過ごす猫もいます。
最期も、いわゆるエイズによるものではなくノンキャリアであってもかかるような加齢による疾患や、老衰で亡くなる猫もいるのです。
- 清潔な飼育環境
- 完全室内飼育
- 避妊去勢
- ストレスのない生活
この4つは基本です。それを踏まえて猫エイズキャリアと暮らす上での注意点を紹介します。
回虫や条虫などの内部寄生虫やノミやダニの外部寄生虫、および原虫(コクシジウムなど)は、子ねこのときは下痢など症状が強く出て危険ですが、体力もついた大人になると免疫力で抑え込み無症状になることが多いです。
でも、エイズを発症したりすると一気に悪さを始めますので、定期的に検便をして見つかったら体力のあるうちにしっかり駆虫しましょう。
ワクチンは一時的にせよ免疫力を落とすので、FIV感染猫にはためらう飼い主さんも多いです。でも、未発症で健康な状態であれば、猫風邪の原因である猫ヘルペス・猫カリシ・猫パルボの予防は大切です。もちろん獣医さんと相談の上の接種となります。
定期的に体重を計りましょう。完全にエイズ発症期なると猫はどんどんやせて行き、削痩(さくそう)というあばらや背骨が触るほど体幹が細くなった状態になりますが、その前段階でも体重の減少がみられます。
お口のチェックも大事です。猫エイズで多くみられる症状が慢性の口内炎です。皮膚炎などができていないか、治りが遅くないかも要チェックです。
飼い主さんだからこそできる健康チェックも大切ですが、かかりつけの獣医さんに健診してもらうようにしましょう。もし何らかの病変が見つかっても、早期に治療することがエイズ発症を抑えるために有効です。
猫エイズキャリアの長生きの秘訣は二次感染の防止
寄生虫の駆除やワクチン接種はエイズキャリアの猫にとって命取りとなりかねない二次感染を予防することになります。外に行けばさまざまなウイルスや菌にさらされる危険が高まることも完全室内飼いを強くすすめる理由のひとつです。
慢性的な口内炎や貧血など猫の体調に変化が起こり、エイズ関連症候群になったとしても、ひとつひとつ丁寧に治療をしていくことが長生きにつながるのです。
エイズ期に発症しやすい悪性腫瘍から猫を守るには?
FIV感染猫の長生きの秘訣は二次感染の防止が大きいことは上述しました。エイズ期になって命を落とす理由に二次感染によるものが多いからです。
もうひとつ、エイズ期に発症しやすい悪性腫瘍と免疫について紹介しておきます。
悪性腫瘍とは、細胞が異常に増殖して他の正常な細胞に浸潤したり転移を起こすもので、正常な細胞の栄養分を吸い取るので生体を急激に衰弱させ死に至らせます。
残念ながら、エイズ期に発症した悪性腫瘍の予防法は見つかっていません。悪性腫瘍は体の至る場所で発現する可能性はありますが、エイズ期にみられる腸のリンパ腫は腸内の炎症と関係があるとみられています。
日頃から腸を健康に保つことはエイズキャリアの猫にとってもたいせつなことだといえます。また、ストレスをかけない生活を心がけることも重要課題です。ストレスは免疫力の低下を招きます。
エイズ発症をさせないためには猫の免疫力を低下させないことが重要!そのためには、
清潔な環境で、腸内環境を健全に保ち、ストレスをかけないことが大切!