10年以上預かりボラを経験していくつかの団体や個人のボラさんとお付き合いしていく中で、譲渡条件について常日頃から考えていることがあります。
せっかく保護猫の里親になろうと思っても、立ちはだかるのが譲渡条件!特に、年齢制限と単身者不可(特に男性)について厳しすぎるという意見が多いですね。
譲渡する側が何を危惧しているのか、譲渡条件は絶対なのか?―今回は年齢制限についてぶっちゃけたいと思います。
猫の平均寿命と人間の健康寿命を考えよう
私が一番最初にお手伝いをしたボランティア団体は、譲渡条件のひとつに55歳以上不可という項目がありました。でも、これは子猫の場合です。
厳しいな…と思ったのが正直な感想。
その時代表からこう言われました。
「猫は15年~20年一緒に暮らすことになるのよ。
猫もシニアになれば病院通いも増えるでしょ。
そのとき体力的に負担になるリスクが大きいから
年齢制限が必要なのよ。」
別にね、高齢者の余生の算段をしているわけではないのですよ。だから「70くらいで死んじゃうと思ってるの!?失礼な!」なんて思わないでくださいね。
55歳は高齢者か!?
日本は世界でも長寿大国と言われています。2020年の日本人の平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳!
55歳とか60歳なんてまだまだ若いと言えます。
でも、もうひとつ大事なのが健康寿命です。
健康寿命とは、自立して生活できる年齢のこと。2016年時点での調査結果で、男性72.14歳、女性74.79歳でした。
介護や何かしらの支援を受ける生活が長い、特に女性では10年以上あるわけです。
猫がシニアになったときを考える
若い時は健康でそう手がかからなかった猫も、シニアになれば体調を崩したり長い通院が必要になったりすることが多くなります。
毎日点滴に通うなんていうこともあるかもしれません。
もう亡くなってしまいましたが、巨大結腸症になったシニア猫の摘便に何度も通った経験がありますが、なかなか体力的に大変でした。
保護団体、ボランティアが求める猫の幸せ
譲渡に携わるボランティアも、高齢者が猫と暮らすことを否定しているわけではありません。
ただ、保護猫を託すにはいくつか条件が必要になってくると思っているのです。
一般に『保護猫』と呼ばれる猫たちは多くの場合一度は身の危険にさらされたことがあります。
- 道端に捨てられた
- 保健所に持ち込まれた
- 多頭崩壊
- 繁殖からの引退
- 事故に遭って保護された
保護猫たちはこういう経験をして運良く保護団体やボランティアの元へやってきました。
保護主は、
二度と同じ目に遭ってほしくない
そう願っているのです。
年齢制限をするのは、猫を最後まで面倒見て、看取ることができる可能性が高いか低いか客観的に判断するしかないからです。
そういった思いから、猫を託す里親さんに対する条件が厳しくなってしまうのも責められないと思いませんか?
成猫という選択肢を考えて!
最初にも書いたように、年齢制限は子猫の場合がほとんどです。
でも、保護団体や個人のボランティアの元には成猫もたくさんいる場合が多いんですよ。
譲渡会に行っても子猫ばかりのことってありませんか?特に春先から秋口までは子猫だらけ!
それはぶっちゃけちゃうと無理だろうなぁ…って保護主も思っているから…。
子猫と違って猫も大人になると環境に敏感になります。譲渡会に行く度に体調を崩す子もいるほどです。
だから保護主としても、子猫が少なくなってから参加させようという気持ちに傾きがち。
ネットの里親募集サイトに掲載されていなくても、保護主のホームページを見ると募集中の成猫がいたりします。
我が家の実例「義母の形見となった三毛猫」
以前はね、それでも年齢制限でビシッと区切ってしまうのはさすがに同情していました。
でも、私自身が実際に飼い主の死亡で猫が行き場を失うかもしれないという事態に遭遇してしまったのです。
取り残されていた猫たち
数年前のことですが、少し離れたところに住んでいた義母の家に子猫がいると娘から聞かされました。
当時義母は72歳で一人暮らし。
どうするんだろうと懸念はしたものの義姉もいることだし下手な意見もできないので静観していました。
ところが子猫を迎えて5ヶ月ほどした頃、義母がガンになってしまったのです。
義母は我が家が猫を飼っているから面倒を見てくれるだろうと安易に考えていたのかもしれません。
私が逝ったらよろしくね、と言われ内心どうしよう…と途方に暮れました。
実は義母はそれ以前から猫を1匹飼っていてその子は当時13歳。
病気でやせ細りいつ逝ってもおかしくない状態でした。
一気に2匹も迎えるのは狭いアパート暮らしだった我が家では負担が大きすぎます。
困惑しているうちに、義母はあっという間に亡くなってしまいました。
入院したと聞いて実家に残されていた2匹を引き取りに行った時、ほぼ初対面の私たち(娘と二人)に対しても、警戒することなくすんなりキャリーに収まりました。
飼い主死去で行き場を失う猫は多い
1月末、人気のない一軒家はあまりに寒く、2匹はぴったり寄り添っていました。
悩んだ末、マンション購入の話が進んでいたこともあって2匹は我が家で引き取ることに。しかし引っ越しを前にシニア猫は天国へ旅立ってしまいました。義母が亡くなって3ヶ月後のことでした。
義母は保護猫を譲渡されたわけではありません。知り合いの家で生まれた子猫をもらってきました。
72歳の一人暮らしの高齢者に譲渡する団体はまずないと思いますし。
猫を飼うきっかけで多いのが、「知り合いからもらった」です。
結果として、三毛猫は保護猫になることなく「忘れ形見」としてうちに迎え入れました。でも、あくまで結果論です。相談も同意もなく子猫をもらってきたのですから。
こういうケースはよくある話です。保健所に持ち込まれる猫の多くも、飼い主(たいていが親)が亡くなって飼えなくなったから。
義母はあまりにも無責任な飼い主といえます。恥を忍んで話したのは、保護ボランティアはこういう事例をいくつも見てきているということを知ってほしいと思ったからです。
まとめ
譲渡条件に年齢制限があったら絶対だめかと言うとそうではありません。団体や個人のボランティアによっては、「飼えなくなったときの後見人」を決めれば譲渡することもあります。
しかし、どうして年齢制限をもうけているのかを、今一度冷静に考えてみて欲しいのです。
私自身、年齢制限に引っかかる歳になってしまいました。もう子猫を我が子として迎えることはないでしょう。
今は13歳のシニア猫と中年カミカミ漢の俺様猫、義母の忘形見のお嬢ちゃんを見送るのが使命だと思っています。
譲渡条件の年齢制限で諦めているなら、落ち着いた成猫やシニア猫を迎えてくれたらいいなぁ…と預かりボラとしては切に願っているのです。