猫のフィラリア症予防のアドボケートとレボリューションの効果は同じ?どっちを選ぶべき?
ツイート最近、獣医さんから猫の駆虫薬としてアドボケートをすすめられたと耳にすることがちらほら。レボリューションと同じくフィラリアの予防もできることから、好まれるようになったと思います。
フィラリア症は犬だけの感染症と思っている人も多いようですが、猫も感染します。獣医さんでポスターが貼ってあったり、リーフレットを目にしたことがあるはずです。
猫では、特に滴下型の予防薬が好まれています。滴下型とは肩甲骨のあたりに垂らすタイプでスポットオンとも呼ばれています。
この記事では、アドボケートについての商品紹介と、レボリューションとの違いを説明します。
アドボケート猫用ってどんな薬?
アドボケートは犬猫用内外部寄生虫駆除剤です。外部寄生虫のノミ・ミミヒゼンダニの駆虫と内部寄生虫の猫回虫・猫鉤虫の駆虫、そしてフィラリア症の予防薬です。
製造販売はバイエル社です。有名な医薬品メーカーですよね。アドボケートの知名度がまだそれほどないのは、販売から日が浅いことが大きいでしょう。日本で販売開始されたのは、2016年2月です。
外国での使用状況は欧州で2003年承認を受け、その後多くの国で申請・承認されています。
- バイトリル・・・犬・猫の尿路感染症を治療する薬
- プロフェンダースポット・・・猫回虫、猫鉤虫、瓜実条虫、猫条虫および多包条虫を駆除する薬
- コセクイン・・・犬猫の関節健康補助食品
- バイコックス・・・抗コクシジウム薬
- ヘッドスタート・・・仔牛用全脂粉乳(牛初乳粉末)
ちょこちょこお世話になる薬品もあります。特に子猫を保護したときはバイコックス!コクシジウム退治に一番よく処方されます。
アドボケートの有効成分と効果の仕組み
アドボケートの有効成分は、イミダクロプリドとモキシデクチンです。
イミダクロプリドは比較的新しい殺虫剤で、虫の神経に情報を伝達するアセチルコリンの作用を妨げます。
モキシデクチンはマクロライド系薬といって、虫の神経のうち抑制性の神経に働きかけてその作用を活発にします。それによって神経全体の活動が抑えられて寄生虫を殺します。
レボリューションの有効成分であるセラメクチンと同じ系統の薬ですが、モキシデクチンの方が古くから使われています。
セラメクチンについてはレボリューションの記事を参考にしてください。下の方にサイト内記事のリンクを貼ってあります。
アドボケートの投与できる月齢と体重及び注意事項
アドボケートは生後9週齢以上の子猫及び体重1kg以上の猫から投与可能です。妊娠及び授乳中の母猫に対しては、安全性が確認されていないので、基本的には投与不可です。
アドボケートの副作用は添付文書によると、まれに一時的なかゆみや紅斑、脱毛など皮膚症状が出たり、よだれや嘔吐などの体調不良とあります。
- よだれ
- 落ち着きがなくなる
- まれに嘔吐
- 投与部分にかゆみ・脱毛・皮膚炎など過敏症状
- 興奮・食欲不振などいつもと違う行動
また、薬剤を舐めてしまった場合は、運動失調や目の異常、呼吸の異常など一時的な神経異常が見られると書いてあります。
重篤な副作用の報告は2018年まで5件ありますが、そのうち猫に関しては2件です。3年間という短い期間なので少ないのは当たり前かもしれませんね。
こちらのサイトで商品名などを入力すると閲覧できます。
動物用医薬品等データベース
シャンプーに関しての注意事項もあります。猫はそれほど頻繁にシャンプーはしないと思うのですが念のため。
頻繁なシャンプーは有効性が低減するようです。目安としては、投与後1ヶ月以内で1、2回程度の水浴(それも短い時間!)であれば大丈夫とのことです。石鹸を使って洗うのは避けたほうが賢明です。
アドボケートとレボリューションの相違点一覧表
ノミ駆虫、フィラリア予防ですすめられることが多いアドボケートとレボリューション。ふたつの薬品の相違点を表にしてみましたので参考にしてください。
アドボケート | レボリューション | |
---|---|---|
成分 |
イミダクロプリド |
セラメクチン |
認可されている |
フィラリア予防 |
フィラリア予防 |
投与可能条件 |
生後9週齢以上 体重1kg以上 |
生後6週齢以上 |
投与方法 | 皮膚への滴下型 | 皮膚への滴下型 |
メーカー | バイエル | ゾエティス |
アドボケートが駆虫できる鉤虫って?
レボリューションよりアドボケートの方が駆虫できる寄生虫が多いので、推奨されることがあるようです。上記の表をみると、レボリューションにはなくてアドボケートにある効果として猫鉤虫の駆除があります。
さて、猫鉤虫とは何でしょうか?あまり聞かないですね。鉤虫は1.5cm以下の小型の寄生虫で猫の小腸に寄生します。感染経路は、土や水の中にいる幼虫を飲み込んだり、皮膚から侵入して感染します。また、感染した母猫の母乳を介しても感染します。
主な症状は貧血です。鉤虫は、猫の腸壁に食いついて大量の血液を吸います。健康な大人の猫の場合はそれほど症状は出ませんが、子猫の場合は深刻です。
鉤虫症の検査は糞便検査で糞便中に産み落とされた虫卵を見つけます。ただし、鉤虫の虫卵はとても小さいので肉眼では見つけられません。特別な方法で行います。
比較的容易に感染してしまう寄生虫なので、外の猫さんの潜在的な感染率は高いと予想されますが、症状があらわれない場合も少なくありません。
ただ、鉤虫の駆除に効く薬は比較的多くて、マクロライド系薬もそのひとつです。アドボケートの有効成分のモキシデクチンもそうです。
マクロライド系薬はフィラリア予防薬として最近はよく使われていますので、同時に鉤虫も駆虫されます。知らないうちに駆除しているというわけです。
アドボケートはたくさんの寄生虫に効く?薬の適応外処方について
ネット検索をすると、アドボケートは承認されていないけれど他にも効く(駆除できる)ものがあるって目にしませんか?例えば、鞭虫・肺虫・疥癬・毛包虫(ニキビダニ)にも効果がある・・・。
レボリューションも同じように適応外処方されることがあります。承認されていないだけで、多くの獣医師が疥癬症の治療に使っています。この場合を適応外処方などといいます。
猫の疥癬症(ヒゼンダニ症)とは?
猫の疥癬症は猫小穿孔(ネコショウセンコウ)ヒゼンダニというダニが引き起こす皮膚病です。このヒゼンダニは猫の耳ダニの原因のミミヒゼンダニとは別の虫です。
症状は脱毛、紅斑、鱗屑化(皮膚表面の角質細胞がはがれ落ちるもの)及び肥厚した痂皮(かさぶた)が特徴です。強いかゆみも伴います。
初期は顔や耳介にあらわれることが多いのですが、ひどくなると全身に広がります。
一般的な治療はイベルメクチン(抗生物質)という薬を経口投与または注射します。先ほど書いたように、セラメクチン(レボリューション)の投与で治療する獣医さんも多いです。
猫の毛包虫症(ニキビダニ症)とは?
毛包虫は別名で「ニキビダニ」や「アカラス」ともいわれ、動物の毛包内(毛穴)に寄生するダニの一種です。猫の毛包虫症は猫の体に常駐しているネコニキビダニが原因です。
ネコニキビダニは体長2~3mmの細長い虫で、毛穴の中に寄生して皮膚炎を起こします。このネコニキビダニは、ごく一般的に多くの猫に常駐しています。常在菌ってやつです。
症状は脱毛・フケ・赤くただれる・かさぶたなどです。主に頭部、顔、首にあらわれます。ニキビダニ症は犬には多い皮膚病ですが、猫では稀です。
ちょっと専門的になりますが、猫のニキビダニはニキビダニ属(demodex)の一種である「D. cati」と「D.gatoi」の2種で、犬のそれは「D.canis」「D.injai」と違います。
しかも、他の猫に移るものでもなく、皮膚炎を起こすくらいの状態になってしまうのは、遺伝的に増殖してしまうか、もしくは猫自身の免疫力が下がって増殖してしまった結果と考えられています。
※ネコニキビダニのうち、ひとつの種類(「D.gatoi」)は他猫への感染が認められています。
猫のニキビダニ症の治療は、発症頻度が低いせいかあまり研究されていないようです。体の一部にできているような初期の場合は、自然治癒していることが多いです。
中程度であれば外用薬(軟膏)を処方されます。アミトラズという殺虫剤がよく使われているようです。
また、薬浴やドラメクチンという寄生虫駆虫剤の皮下注射を行うなどがありますが、どれも獣医師との十分なインフォームドコンセントが重要です。
アドボケートの有効成分であるモキシデクチンがニキビダニに効くという報告がありますが、比較的軽症の場合で、投与間隔も通常の使用より多く、獣医師のもとで行うことは言うまでもありません。
予防としては、ほとんどが幼猫や猫エイズ、猫白血病、内分泌疾患、腫瘍、免疫抑制剤の使用などが原因と考えられています。基礎疾患がある場合発症するので、免疫力を低下させないよう気をつけることです。
猫の鞭虫症について
鞭虫と肺虫についても少し説明しておきます。
鞭虫にはいくつも種類がありますが、現在の日本で犬猫の消化管寄生虫で多いのは犬鞭虫です。名前の通り本来の宿主は犬であって、猫に寄生することはないといわれています。
世界的にみれば、猫に寄生する鞭虫類も知られていますが、今のところ日本では分布はしていないそうですよ。
猫の肺虫症について
肺虫は猫の線虫症と犬の線虫症では種類が違います。猫の肺虫症で一番多く報告があるのが、Aelurostrongylus abstrususという線虫です。
この寄生虫の感染経路は、外界にある幼虫をナメクジやカタツムリが取り込み、そこで幼虫は感染力を持つまでに成長します。
感染力を持つ幼虫が猫の口に入って感染します。
まさか猫はナメクジなんて食べないでしょう・・・いえいえ、間違って口にしてしまうかもしれませんし、カタツムリをネズミや鳥、爬虫類などが食べて待機宿主となったら・・・?
当然、外で力強く生きている猫たちは、感染率が上がります。ちなみに、犬肺虫はフィラロイデス類の線虫で、こちらは糞便中に排出された幼虫を経口摂取することで感染します。
猫肺虫症の症状は、体力のある猫では無症状であることが多いのですが、幼猫やシニア猫、免疫力の低下した猫の場合は間質性気管支炎、呼吸困難など深刻な状況にもなり得ます。
軽度の場合でも咳やくしゃみ、呼吸音がゼーゼーするなど呼吸器疾患が起こります。
猫肺虫症の治療にイミダクロプリド10%+モキシデクチン1%で、幼虫排出抑制率はほぼ100%という報告があります。アドボケートが未承認でありながら適応外処方として使われる理由です。
その他、猫肺虫症にはいくつか効く薬剤が報告されています。
アドボケートの適応外処方は自己判断はダメ!
アドボケートは動物病院では一般的には承認された効果で使われています。ノミ・ミミヒゼンダニ・猫回虫のお薬と説明されることが多いと思います。
最近は猫のフィラリア感染も注意が呼びかけられているので、レボリューションと同じようにフィラリア予防薬としてもすすめられます。
その他の薬効について詳しく説明されることは稀で、例えば疥癬とかニキビダニ症の場合に通常より頻繁に投与するので十分な説明がされるはずです。
なんにしろ、自己判断で適応外の使い方をするのは絶対やめましょう。
※犬糸状虫症の予防=フィラリア予防
アドボケートとレボリューションどちらが効果的?
アドボケートとレボリューションの承認されている効果はほぼ同じです。動物病院でも、内外部寄生虫駆虫及びフィラリア予防と説明されていると思います。
動物病院によって取り扱っている製品の違いがあるので、飼い主としても混乱してしまう原因ですね。使用されてきた年月と臨床例からレボリューションをすすめる獣医さんもしますし、適応外も含めて駆虫効果の高いアドボケートをすすめる獣医さんもいます。
ただ、たくさんの寄生虫に効果があるから一番良い!と言い切れないと思います。実際にアドボケートではなくレボリューションを使うメリットもあります。
- 生後6週齢の子猫から使える
- 速乾性があるので投与後2時間経てばシャンプーができる
また、口コミでもみられるように、アドボケートはニオイがちょっときつい。薬剤や溶剤が違うので、合わない子もいます。これは、どの薬を使っても言えることです。
気になるお値段ですが、動物病院で処方される場合はほぼ同じか、若干アドボケートの方が割高のこともあるようです。ただ、これも初回以外は飼い主が投与することが多いので、まとめ買いで値引き販売している動物病院が多いです。
ネットで個人輸入業者を通して購入することもできます。アドボケートもレボリューションも要指示医薬品(人の場合の医師の処方箋がないと変えない医薬品)なので、楽天やアマゾンでは販売していません。
安く購入できるよく知られたサイト『うさパラ』で比べてみます。
3ピペット・・・3,805円
6ピペット・・・6,824円
12ピペット・・・11,836円
(2022年3月)
3ピペット・・・4,176円
6ピペット・・・7,568円
12ピペット・・・13,325円
(2022年3月)
6ピペット・・・4,851円
12ピペット・・・8,874円
(2022年3月)
15ピペット・・・7,131円
(2019年5月)
ストロングホールドとレボリューションは同じ製品です。レボリューションについてはこちらの記事を参考にしてください。
最近は、猫にもフィラリア予防が推奨されます。アドボケート、レボリューション等フィラリア予防薬はどれも高い効果が認められています。
フィラリア予防という点を重視するのであれば、どちらでもかまわないでしょう。レボリューションをずっと使っているのであれば特に変更する必要もないと思います。
どちらにせよ、使い始める際は獣医さんの指示に従いましょう。もし既にフィラリアに感染している場合、投与することによって重篤な副反応やショック症状を起こすこともあります。
ノミ、ミミヒゼンダニ・回虫に関しても特にどちらが優れていると決め手はなさそうです。ミミヒゼンダニに関しては、レボリューションよりアドボケートが効いたというレビューもあります。
寄生虫が薬剤に耐性を持つことが考えられるので使い分けも必要かもしれません。
ひとつ気になるのが肺虫です。日本では今まであまり知られていませんし、実際に感染例もほとんどないようですが、媒介となる外来種のカタツムリが見つかっていますし、今年になって感染例も報告されています。
アドボケートが肺虫駆虫の第一選択肢になるかはまだわかりませんが、居住地の寄生虫感染についてかかりつけの獣医さんに教えてもらうといいですね。
その上で、レボリューションかアドボケートか、または他の駆虫剤を選択するかは飼い主さんの考え方次第といえます。
アドボケートをネット購入するのでしたら、先にも紹介したうさパラさんがお得です。