生後8週齢規制実現か?ペット販売と保護子猫の現状

幼猫の販売「8週齢規制」がいよいよ実現!ペットブームと保護猫

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2019年1月、ペット販売大手のコジマが「生後8週(57日)以降の引き渡しを推奨します」と宣言したことは、ちょっとした話題になりました。

 

日本ではペットショップの店頭で、子猫や子犬が販売されていますね。生体販売・・・です。ペット先進国といわれる欧米では、生体販売自体を規制する動きが強まる中、日本はまだまだ後進国です。

 

まだほんの小さな子猫もガラスケースに入れられて陳列されています。ふだん、同じくらいの保護猫を世話している身としては、「大丈夫なの!?」と心配になってしまうのが本音です。

 

 

 

幼齢犬猫の販売!2019年春日本の動物愛護法の現状

 

日本にも動物愛護法があります。そこには、幼齢の犬猫の展示や販売に関して規制はあります。

犬猫等販売業者(販売の用に供する犬又は猫の繁殖を行う者に限る。)は、その繁殖を行つた犬又は猫であつて出生後五十六日を経過しないものについて、販売のため又は販売の用に供するために引渡し又は展示をしてはならない。 第22条の5(幼齢の犬又は猫に係る販売等の制限)

 

ただし!これには附則があって、現実は生後49日となっています。

 

幼齢個体の販売制限について
 出生後45日を経過しない犬及び猫の販売並びに販売のための展示・引渡しは禁止されています。(繁殖を行っている犬猫等販売業者に限ります。)
 ※平成28年8月31日までは45日、それ以降法に定める日までの間は49日が規制の対象になります。
 ※日齢の数え方は、生まれた日は計算せず、生まれた次の日から1日として計算します。
環境省「動物取扱い業者(第1種動物取扱い業者)の方へより抜粋」

 

法律に疎い私などは、なんで実現できていないの?と頭をかしげます。8週齢規制は、もうずいぶん前から動物愛護法改正の時期になると議題に上ってきた問題なのに・・・。

 

たった1週間されど1週間!幼猫は販売意欲を誘う?

 

動物愛護法はおおむね5年で見直されます。本則で「出生後56日・・・」となったのは2013年施行の改正動物愛護法です。法律では規定されているのになぜ?という疑問ですが、附則なるもののせいです。

 

附 則(平成二四年九月五日法律第七九号)にこうあります。
第七条 施行日から起算して三年を経過する日までの間は、新法第二十二条の五中「五十六日」とあるのは、「四十五日」と読み替えるものとする。
2 前項に規定する期間を経過する日の翌日から別に法律で定める日までの間は、新法第二十二条の五中「五十六日」とあるのは、「四十九日」と読み替えるものとする。

 

「別に法律で定める日までの間」ってなんだー!?

 

『生後56日』が実行されない理由は、販売業者の強い反発でした。理由は、

  • 飼育費用
  • 売れにくくなる

確かに、7日間といえども飼育費用がかかります。年間出荷頭数が多ければそれだけ大きくなるでしょう。でも、いくら商品といえど、命あるいきものですからね。

 

売れにくくなる・・・というのは、購入する人の問題にも関わってきます。販売業者は、犬や猫が幼いほど消費者の購買意欲を刺激すると思うわけですね。

 

 

あながち見当ハズレではないのが悲しい現実ではあります。でも、猫の譲渡をしていると、最近は少し変わってきたかな?と思うこともあります。

 

保護猫は、そもそも母猫がいない場合が多いです。1匹で保護されることもあります。生後49日経っていない幼猫も場合によっては譲渡対象です。

 

譲渡会では小さな子に人気が集まるのは確かですが、小さ過ぎて怖いと言う人も増えてきました。もちろん離乳している子が譲渡対象です。きちんとケアをすることを考えると躊躇してしまうのはごく当たり前の感覚です。

 

子猫にとっての生後49日と56日、たった1週間じゃない!

 

ところで、なぜ生後8週齢(56日)なのか?議論の中心は主に「犬猫の社会性」です。あまりに早く親兄弟から離すと、社会性が育まれず飼いにくい子になる・・・。

 

確かにそうです。異論はありません。でも、それが8週齢であればOKかというと別問題。個体差がありますしね。ってことで、科学的根拠が弱いという理由で、ずっと業界は反論してきたんです

 

獣医師が書いた飼育本には猫は生後2週~9週が社会化期とあります。兄妹猫とじゃれあったりして加減を覚えることも、トイレや爪きり、ブラッシングなど人間と暮らす上で必要なことも経験させることが必要な時期です。

 

ちょっと考えれば、生後56日を超えていたらリスクゼロ!なんて思わないですよね。自然な形で「個」ができあがるまで、親と一緒にいるのが望ましいのは動物の種は関係ないと個人的には思います。

 

 

2017年、フィンランドのヘルシンキ大学の獣医生物学部チームが国内の猫の飼い主やブリーダーを対象として実施したアンケート調査の結果があります。それは、もっと長く母猫と一緒にいたほうがよいというものです。

 

母猫と引き離した時期と、その後の問題行動についての見解はこうです。

  • 問題行動を起こす確率は、8週齢より前に分離された猫のほうが12~13週齢で分離された猫よりもかなり高い
  • 14~15週齢で分離された猫は、12~13週齢で分離された猫よりも、常同行動を起こすリスクが相対的に低い

その結果、母猫と引き離すのは14週齢が良いというものです。

 

生後3ヵ月半です。まだ子猫ではあるけど、「可愛い~♪」と衝動買いさせる月齢ではないことは確かです。

 

子猫の体調が一番不安定な時期

 

社会化期ももちろん重要な点ですが、毎年子猫の世話をしている身からすると、生後8週齢前っていっちばん体調を崩しやすい時期!というのを声を大にして言いたいです。

 

生まれた子猫は、母猫の初乳を飲むことによって、最近やウィルスから身を守る免疫グロブリンを体内に入れます。これを移行抗体といいます。

 

初乳の定義(期間?)ははっきりしていないのですが、その後の母乳とは成分が異なります。人やウサギは初乳だけでなく、胎盤を通して抗体が移行しますが、猫や犬はほんのわずかしか移行しません。初乳大事!

 

猫の場合、初乳は出産後2日程度だそうですよ。

 

この、母猫からもらった移行抗体ですが、だんだん減少していきます。これは個体差があるので、正確にここまで!という線引きはないのですが、生後40日頃から減っていくことが多いようです。

 

 

子猫は初年度ワクチンを数回接種します。今は2回が多いです。その理由は、たいてい生後2ヶ月くらいで1回目のワクチンを接種します。

 

そのとき移行抗体が残っていると、ワクチンの成分を攻撃してしまうので、効力が弱まってしまいます。そのため、1回の接種では効き目が弱いから2回打ちます。(3回以上を推奨する場合もあります)

 

まぁ、そういう理由で、生後7週齢あたりって体調管理が大変なのです。特に、捨て猫や保健所に収容された子猫は、ほぼ100%体調を崩しているからそう感じるのでしょうけど、昨今の悪徳繁殖業者やブリーダーの特集番組を見ると、すべての犬猫が丁寧に体調管理されているとは到底思えませんしね。

 

幼い子猫が捨てられる現実を知ってほしい

 

ペット販売に関しての今の動きと幼猫って大変ですよーということを書いてきましたが、ここからは保護猫について書き連ねていこうと思います。

 

保護猫」という言葉は最近ネットではそれなりに見られるようになってきました。少し前にユーチューバーのヒカキンさんがスコティッシュホールドの子猫を家族に迎え、その様子を動画にあげて話題になったときにも、「できればペットショップからの購入ではなく、保護猫を迎えて欲しかった」と騒がれたほどです。

 

 

今回はその是非は置いておいて、実際に保護猫の里親になった人がどのくらいいるのか?気になります。ペットフード協会の2018年全国犬猫飼育実態調査のグラフをご覧ください。

 

ペットフード協会2018年全国犬猫飼育実態調査から抜粋

犬の場合は圧倒的にペットショップからの購入が多いのに対して、猫は「拾った」が1位です。保護猫の里親になった数字として明確には出ていませんが、「里親探しのおマッチングサイトからの譲渡」と「シェルターからの譲渡」が当てはまるとすると、11.6%です。

 

うーん、まだまだ少ないな・・・というのが正直な感想です。頑張らねば!

 

離乳前の幼猫が捨てられると?殺処分数の現状

 

保護団体の里親募集を見ると、まだほんの幼い子猫が保護されています。離乳前の、いわゆるミルク猫も少なくありませんね。だいたいこういったケースです。

  • 保護猫が出産した
  • 理由不明で単体で見つかるケース
  • 保健所や愛護センターに持ち込まれた

道端でへその緒のついた子猫が発見されて保護団体にヘルプ!というケースも珍しくありません。そういう時は、ミルクボランティアさんが必死に育てます。

 

 

保健所や愛護センターに持ち込まれる・・・。ここ最近犬猫の殺処分数は減少しているとはいえ、まだ多いです。平成29年度の殺処分数は、43,216(犬8,362 猫34,854)です。

 

猫の殺処分数34,854匹のうち、幼齢の猫(離乳前の子猫)は21,611匹です。60%以上がまだ乳離れしていない幼い猫たちです。

 

近年は、愛護センターでは乳飲み子を育てる「ミルクボランティア」を募集するところも増えてきました。それでも手が足りないのが現状なのです。

 

幼猫育児はとても大変!でもあなたの手を待っている子がいます

 

動物愛護法で「8週齢規制」が適用されるのは、繁殖や販売を行っている業者です。ボランティアで保護・譲渡をしている場合には当てはまりません。

 

もちろん、そんな括りは猫にとっては関係ありませんから、どんな子だって社会化期は大切です。できれば、生後8週齢までは親兄弟と一緒に過ごさせたいと誰もが思っています。

 

NPO法人になったり、シェルターを持って大規模に運営しているボランティア団体もありますが、全国レベルで見たら個人で活動している人がほとんどです。

 

そもそも単体で保護されたり収容される子もいます。

 

※基本的に幼猫の場合、感染症等のリスクから、兄妹以外とは一緒にしません。

 

 

先にも書きましたが、生後8週齢というか、生後3ヶ月くらいまではとにかく体調が不安定な時期です。去年6
週齢くらいで我が家に来た子猫は、まずは風邪、次に寄生虫数種・・・病院通いでした。

 

余談ですが、ペットショップから購入してもお腹の虫は出ることがありますよ。検便では出にくい寄生虫もあるし、集団飼育している方が感染率の高い虫もいますし。

 

そういう理由もあって、子猫の譲渡の際は留守番時間には神経質になります。要するに、まだ幼い子猫の里親になるということは覚悟が必要、ってことです。

 

でも!あえてそんなチビ猫の里親さんを募集しているのは、ひとつでも多くの命を助けたいからに他なりません。いまだ幼猫の殺処分数の多さをみれば、ご理解いただけると思っています。

 

ちょっと一歩を踏み出すだけで、助けられる命があります。「収容数」「保護数」・・・なかなかシビアな現実があるのです。

 

  • 里親になる
  • 愛護センターのミルクボランティアになる
  • ボランティア団体の預かり親になる

 

こんなことをやってみようかな、と思う人が一人でも増えることを願っています。

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