キャットフードのビートパルプは悪者か!?メリットとデメリットを検証
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猫の腸活には毎日の食事がとっても大切です。関心の高い飼い主さんであればキャットフードを選ぶとき、原材料の確認をしていると思います。
主原料は何か、不要な着色料などは使っていないか・・・。その原料の中で比較的よくみかけるのがビートパルプですね。
ネットでは猫の健康に悪い、ビートパルプを使っているキャットフードはダメだ、とすっかり悪者扱いですが、実際はどうなのでしょう?
ビートパルプとは何か、なぜキャットフードに使うのか、メリットとデメリットは何かを紹介します。ちょっと見方が変わってくると思いますよ。
ビートパルプって何?キャットフードに入れる目的は?
ビートとは甜菜のことです。サトウキビと同様砂糖の原材料となるもの。甜菜糖またはビート糖はスーパーの店頭でもみかけますね。
ビートパルプは甜菜の根から砂糖を抽出した後の残ったもの。
搾りかす、副産物といわれることからもマイナスイメージがついてしまうのかもしれませんね。
ビートパルプをキャットフードに最初に使ったメーカーは?
ビートパルプは食物繊維の固まりです。元々は牛などの家畜用の飼料として使われていました。それをペットフードの原材料として着目したのがアイムスの創始者ポール・F・アイムス氏です。
現在販売されているアイムスのフードの原材料をみてみましょう。
アイムス インドアキャットチキン味
【チキン】肉類(チキンミール、チキンエキス、家禽ミール)、とうもろこし、植物 性タンパク、大麦、油脂類(鶏脂)、家禽類、食物繊維(ビートパル プ、オリゴ糖)、ユッカ、ビタミン類(A、B1、B2、B6、B12、C、D3、E、 コリン、ナイアシン、葉酸)、ミネラル類(亜鉛、カリウム、クロライド、 鉄、銅、ナトリウム、ヨウ素、リン)、アミノ酸類(タウリン、メチオニン)、 酸化防止剤(ミックストコフェロール、ローズマリー抽出物、クエン酸、BHA、BHT)
はっきり食物繊維として書かれています。他のメーカーはこのような表示はしていないので、ビートパルプとだけ書いてあっても何のことだか分からないのも無理はありません。
キャットフードになぜ食物繊維を配合するのか、開発したアイムスの理念は「腸内環境の健全化」です。アイムス社のホームページにもしっかり記載されています。
アイムス™が誇る優秀な研究者たちが11年もの研究から「IAMS®Plus」を開発。健康的な腸内環境をもたらすビートパルプ(砂糖大根から砂糖を取り除き精製した高品質の食物繊維)の重要性に注目し、当時からビートパルプを配合したレシピを開発。(アイムス社の歴史より引用)
猫に食物繊維が必要な理由は?その適量とは?
猫は完全肉食動物です。獲物を捕えてその肉を丸飲みします。そのために、食物をすりつぶすための臼歯はありません。ペットとして比べられる機会の多い犬は、猫と同じ食肉目ではありますが雑食に近く、臼歯もあります。
でも、猫は肉だけ食べていれば良いのかというとちょっと違います。ライオンなども同じですが、獲物を捕えると肉だけでなく内臓も食べます。
猫も自然界ではネズミや鳥など狩ると、肉だけでなく内臓や軟骨も食べます。ネズミの内臓にはほどよく消化されたビタミンや食物繊維などが入っています。
ほどよく消化された・・・というのがポイントです。なぜなら、猫は野菜類を消化するのが苦手だからです。このように、肉食である猫も食物繊維を微量ながら摂ってきたわけです。
さて、キャットフードに食物繊維を入れる目的は何か?たいていのメーカーの説明です。
- 毛玉ケア
- 便秘予防
- 体重管理
ビートパルプは優秀な食物繊維!?
食物繊維とひとことで言っても、その種類は多く腸での作用もさまざまです。なぜなら、食物繊維とは食物中に含まれる消化されない繊維の総称をさすからです。
食物繊維は性質によって不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2つに分けられます。
不溶性食物繊維の作用
簡単に言うと水に溶けない繊維。腸内の便量を増やす作用があります。便量が増えると腸内の通過速度が速まることがわかっています。
また、腸の蠕動運動を促す効果があり、便秘予防効果が期待できます。代表的なものにセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどがあります。
水溶性食物繊維の作用
水に溶ける食物繊維。水分を含むとゲル状になり消化管の内容物の粘調性を増します。ペクチン、グア、グルコマンナン、難消化性オリゴ糖、イヌリン、サイリウムなどです。
ビートパルプはふたつの性質を持っている
さて、ビートパルプは不溶性食物繊維、水溶性食物繊維のどちらに属しているかですが、
どちらでもある
が正解です。不溶性食物繊維の代表がセルロース、水溶性食物繊維の代表がペクチンですが、ビートパルプはそのどちらも含んでいるからです。
くだものや野菜など植物の細胞壁に含まれる天然の多糖類で、食品添加物としてはジャムにとろみをつけるために使われることで知られています。サトウダイコン(甜菜)、ヒマワリ、アマダイダイ(オレンジ)、グレープフルーツ、ライム、レモン、またはリンゴなどから酸抽出されます。
便秘解消には可溶性食物繊維が有効で、セルロースを使っているフードもたくさんあります。ただ、このセルロース、猫の腸に負担をかけるというデメリットもあります。
ビートパルプはセルロースのデメリットをカバー
食物繊維も腸内で発酵、分解することによって腸の粘膜上皮細胞にエネルギーを供給することができます。一般的に、水溶性食物繊維の方が腸内での発酵が早くて、不溶性食物繊維であるセルロースは発酵が遅く、微生物すら分解できずに腸内を通過していきます。
セルロースは水分を吸って膨らむ性質を持っています。そのため、過剰摂取をすると消化管に負担をかけてしまうのです。特に猫の場合は便秘の原因にもなってしまい、便秘解消の目的とは本末転倒になってしまうことも!
ビートパルプは、セルロースより猫の体に対する負担が少ない食物繊維として重宝されているのですね。
ビートパルプが危険視される理由とは?
では、なぜビートパルプは危険だと騒がれるのでしょう?ネットの声を拾ってみると、その答えはどうやら製造方法に対する不安です。
ビートパルプに硫酸系の薬品が残っている?
ビートパルプの製造方法は2種類あります。
- 甜菜を搾って圧力をかけて抽出する方法
- 薬品を使って抽出する方法
当然②の製造方法で作られたビートパルプが問題になってきます。国内では、家畜の飼料としてのビートパルプは家畜飼料法で食品製造副産物等にあたります。この法律に則って、製造方法にも厳密な基準があります。なので、基本的には安心できるものです。
ただ、キャットフードのメーカーがどんな品質のビートパルプを使っているか、消費者にはわかりづらいことが不安を煽る大きな要因であることは間違いないです。
ビートパルプを使わなくても食物繊維は補える
キャットフードに食物繊維を入れるのに、かならずしもビートパルプである必要はありません。同じように、セルロースである必要もないのです。
実際にハイプレミアムフードと呼ばれる値段がお高めのフードは使用していないことが多いです。ネット上で猫関連のページに必ずといっていいほど表示される話題のカナガンキャットフードの原料をみてみます。
『カナガンで使用している原材料は、すべて人間が食べられる高品質で新鮮な食材を厳選しています。』と謳っているだけあって高品質の原料を使っていることがうかがえます。
サツマイモは食物繊維が多いことが知られていますね。そのほか、ジャガイモ、海藻にも期待できますし、マンナンオリゴ糖、フラクトオリゴ糖も食物繊維です。りんごには水溶性食物繊維のペクチンが多く含まれています。
それでもビートパルプを使うのはなぜか?
ひとつには、コストの問題であることは否定できません。これは原料全体にいえることですが、良いものを使おうと思ったら材料費はどーんと上がります。
例えば、カナガンやシンプリーなど海外の商品ではなくても、国産にも材料にこだわったキャットフードは販売されています。・・・が、どれもかなり高いです。1kgあたり4000円を超える商品がほとんどです。
また、コストの問題だけでないことも考えられます。一般の成猫用キャットフードの粗繊維は3%程度です。カナガンは少し低いと先述しましたが、国産のハイプレミアムフードも同等かそれ以下です。
猫によっては、食物繊維量が多く必要な子もいます。毛玉がたまりやすい長毛種だったり、生まれつきお腹が弱い子は、もう少し多目の食物繊維の方が良い場合もあります。シニアになると、腸の働きが悪くなるので必要になることも。
こうしたスペシャルケアのためにビートパルプなど加工された原料を使うこともあります。
キャットフードに使われるビートパルプまとめ
ビートパルプが使われているというだけで、粗悪なキャットフードだと決め付けるのは早計です。問題はその品質です。きちんとしたメーカーであれば、ビートパルプの品質や使用目的についてホームページ等に記載されているはずです。
ホームページに記載がない場合は問い合わせてみるとよいです。信頼できるメーカーであればきちんと答えてくれます。
それでもビートパルプについて心配であれば使っていないフードを選ぶとよいです。あなたの猫ちゃんにとって食物繊維が足りないな、と思ったらサプリメントで補ったり、たまに茹でたサツマイモなどを少量与えるだけでもだいぶ違います。
