ドライフードだけで本当に大丈夫?猫の習性と泌尿器疾患の関係
ツイート猫の食事に関するアンケート調査によると、主食にドライフードを与えている飼い主は7割、ウェットなど他のものと併用している場合では約9割にものぼります。
人間にとって使い勝手が良いのは断然ドライフードです。さらに、獣医さんもドライフードと水だけで十分、と言うことが多いようです。
この場合のキャットフードは総合栄養食を前提にしています。
確かに、十分な栄養を摂るという意味では総合栄養食のドライフードと水だけで猫は生きていけるでしょう。ただ、落とし穴もあるのでしっかり理解してフードを選んでほしいと思います。
猫のごはん、ドライフードが好まれる理由は?
私は現在うちの子3匹だけでなく、保護猫の世話もしています。離乳食から育てることもありますが、特に問題が無ければ徐々にドライフードを食べるようにしていきます。
その理由はやっぱり『ニーズと経済性』です。
キャットフードにおけるドライフードのメリットとデメリットをみていきましょう。
ドライフードのメリットとデメリット
なんといってもドライタイプのフードは人間にとって使い勝手が良いことがあげられます。フードボールに盛った後も傷みにくいので、留守番のときには重宝します。
利便性だけでなく、総合栄養食にはドライタイプが圧倒的に多いのも事実です。
総合栄養食とはそのフードと水だけで猫の健康を維持する栄養をまかなえるものを指します。これに該当しないフードには『一般食』『栄養補完食』『副食』などと表記されています。
さらに、経済性からもウェットより割安であることは飼い主にとってはメリットです。これはあくまでドライとウェット、同程度のランクの場合です。
ドライフードのメリット
- 日持ちするから留守番の多い猫には便利
- 同じランクのウェットより割安
- 総合栄養食が多い
ドライフードであれば何でも良いわけでもないし、保存をきちんとしないと酸化しやすいなど注意することは多々ありますが、最大のデメリットは、水分量が不足することです。
きちんと水を飲めている猫であれば良いのでしょうが、実は猫ってあまり水を飲まない習性があるのです。
ウェットフードが最近注目される理由
猫がなぜ水をあまり飲まないのか、その説明の前にキャットフードのウェットタイプの最近の動きについて紹介します。
少し前までは、猫の健康にはドライフードが一番!と言われていました。実際わたし自身獣医さんに言われた経験があります。
ただ、最近は少し変わってきたように感じます。猫の水分摂取の不足が考えられる場合は、ドライフードだけの食事はかえって危険だと言う意見も多く聞かれるようになりました。
ウェットフードのメリットとデメリット
ウェットフードの最大のメリットは、水分を食事から補うことができることです。ドライフードの水分含有量が10%以下であるのに対して、ウェットフードは75~80%です。
ウェットフードのデメリットは、飼い主にとってちょっと面倒、そして費用がかさむということでしょう。
ウェットフードは開封してしまうと日持ちしません。一度に食べきらない場合は冷蔵保存が必要で、次に食べるときには温めなおさなければなりません。
温めなおしたごはんは食べない・・・なんて猫もいますしね。
それでも、ウェットフードは猫の水分不足を補うという点でデメリットを大きく上回ると思いませんか?
最近のペットフード業界の動向はウェットへ?
ウェットフードのことを猫缶と呼ぶように、昔は缶詰がほとんどでした。ゴミの日まで猫缶が山盛りに~っ!という状態になってました。
今はパウチやトレイタイプも多く、容器も始末しやすくなりましたね。これもペットフードメーカーの戦略かもしれませんね。
現在はドライフードイチオシからドライとウェットの併用をすすめている獣医さんも少なくありません。メーカーも推奨しています。
我が家のにゃんず愛用のニュートロやピュリナも『水分不足解消にウェット!』ってかんじです。
たとえばニュートロでは、
ニュートロの公式HPはこちら
メーカーに踊らされているわけではなく、確かにドライだけだと水分足りてないな・・・と思うので、併用大賛成です。
猫が水分不足になりがちな理由
さて、なぜ猫は水分不足になりやすいか?という疑問です。
ご存知の方も多いと思いますが、現在ペットとして私たちと暮らす猫の祖先は、砂漠に棲むリビアヤマネコです。
砂漠で生きる猫が体得した能力
生き物はその土地にあった進化をとげていきます。砂漠という水の決定的に少ない環境でも生きていけるよう、猫の祖先は体内の水分のリサイクル能力が高くなっていきました。
それがよくわかるのが、濃縮された尿です。猫のオシッコは強烈なニオイがしますね。これは、体内の水分をなるべく外に出さないために尿を濃く、少なくした結果なのです。
猫は喉の渇きを感じにくいとも言います。水分の体内リサイクル能力の発達の結果であると考えられますが、これもまた砂漠で生きる上で習得したものと言えるのでしょう。
猫は水を飲むのが下手!?
もうひとつ私が「へぇ~」と思ったのが、猫は水を飲むのが下手、という事実です。
猫がどんな風に水を飲むのか観察したことありますか?舌先を水につけて飲むのだから、柄杓のように水をすくっていると考えがちですが、それは違います。
正面から見ると、舌先は裏側を向いていることがわかります。
水面についているのは舌先だけ。猫は舌を使って水柱を作り、それをパクッとくわえるようにして水を飲みます。簡単に説明するとこうなんですが、その行動は実はとても複雑です。
そもそも水柱なんて簡単にできそうもないですよね。
水を飲むときの猫の舌は、なんと秒速76cmという速さで動いています。飲む動作は1秒間に3、4回行われて、一度に0.14mlの水を飲みます。
すごくわかりやすい動画があったので紹介します。
なんかもう、芸術的でさえあります。ただ・・・やっぱり効率的とは思えないですね。疲れそうだし。
猫は1日にどのくらい水を飲めばいい?
猫は必要な水分を食事と飲料水でまかないます。当然、食事がドライフードなのかウェットなのかによって、必要な飲料水も変わってきます。
1日あたりに必要とする水分量は、猫の体重や活動量などによって違ってきます。成猫の場合、1日あたりのエネルギー要求量(DER)をmlに置き換えた数値です。
少ない | 50kcal/日 | ||
活動量 | 普通 | 60kcal/日 | × 体重(㎏) |
少ない | 70kcal/日 |
活動量が普通(適度な運動がある)4kgの成猫を例にとると、主食がドライフードの場合は240mlの水を飲む必要があるわけです。
これが、主食がウェットフードの場合は食事から摂る水分が多いのでぐっと減ります。ウェットの水分量が80%くらいあるので、おおよそ48mlという計算になります。
主食がドライフードという猫さん達、1日に200ml以上飲んでますか?
水分不足が招く猫の怖い病気
猫は体内の水分リサイクル能力に優れているのですが、そのせいで腎臓や膀胱など泌尿器に大きな負担がかかってしまいます。
猫下部尿路症候群って?
泌尿器の中でも膀胱と尿道を下部尿路といいます。膀胱と尿道の病気はいくつかありますが、症状が似ていることからまとめて猫下部尿路症候群または泌尿器症候群と呼ばれています。
その中でもっとも多いのが、尿路結石症(尿石症)です。
尿中でミネラル分が固まってできた結石によって、膀胱や尿道が傷つき炎症が起こります。尿道に結石が詰まって排尿ができなくなる尿道閉塞になるとたいへんです。
尿毒症を引き起こし、命に関わる事態を招きます。
特に尿道が長いオス猫がかかりやすいと言われています。
まとめ
ドライフードは手軽でコストもウェットに比べて抑えられることから、現在多くの飼い主さんが利用しています。栄養バランスという点からみても、ドライフードの方が総合栄養食が多く、猫にとってもメリットが大きいと思いがちです。
しかし、最近の傾向ではドライフードだけでは水分が足りないという考えが増えてきました。私自身は腎臓病で愛猫を亡くした経験から、多くの猫たちはドライだけじゃ絶対水分が足りてない・・・と確信しています。
猫の宿命とも言える腎臓病をはじめ、オス猫に多い泌尿器症候群を予防するためには、フード選びと同じくらい水分を十分に摂らせることは重要です。
水をあまり飲まない猫であれば、主食をドライフードからウェットフードに変えてみることをおすすめします。毎食でなくても、夕ごはんだけウェットにするだけでもだいぶ違いますよ。