痒いだけじゃない!猫に付くノミとお腹に棲む条虫症の関係
ツイートノミはもっともポピュラーな犬猫に付く外部寄生虫です。でも、その被害は人間にも及びます。ノミに刺されると(吸血されると)ものすごく痒いです!蚊の比ではありません!!
猫も人や犬ほどではないにせよ、痒いことには変わりありませんし、アレルギーを発症することもあります。
さらに気をつけたいことは、ノミは小腸に寄生する外部寄生虫の運び屋でもあることです。完全室内飼いをする飼い主が増えたことなどから、猫の寄生虫症は減少傾向にありますが、ノミを媒体とする条虫という寄生虫だけは別です。都会部でもまだ多く感染する猫が多いのです。
この記事では、ノミと条虫の関係、そしてノミの駆除方法について紹介します。
猫につくノミの一生と中間宿主としてのノミ
まずはノミについて少し知っておきましょう。『ノミの一生』ってやつです。「え~っ」と眉をひそめたアナタ、ノミを完全退治するためにはぜひ知っておきたいことなので、我慢しましょうね。
ノミとひとことで言っても2000種類以上あるそうです。日本で確認されているだけでも70種にものぼるとか!その中でも、私たちにとって身近なものは『ネコノミ』『イヌノミ』『ヒトノミ』の3種類です。
どれも猫に付きます。ただ、もっとも多いのはやはり『ネコノミ』です。
ノミがしぶといと言われる理由は?1年にもおよぶ待機期間が!
猫を飼っている人でなくても油断できないのがノミです。昔、田舎の祖母の家で、ぴょんと畳の上を飛んでいる小さな黒い物体を何度も見たことがあります!
これはノミの成虫です。猛烈なかゆみをもたらすにっくき吸血魔です。足が赤いテンテンだらけになった経験があるのでつい熱くなってしまいます・・・。
肉眼でも確認できるので、成虫を退治するのはそう大変ではありません。根気は必要ですけど。
ノミは卵は成虫になるまでに2回脱皮をします。その後さなぎになるのですが、その前に幼虫は糸を吐いて近くのゴミを集めて繭を作ります。その中でさなぎになります。
幼虫は猫の体表でも生活できますが、通常は猫が体を動かしたときの振動で落下します。もしくは毛繕いのときに食べられてしまう。
さなぎは繭の中で脱皮して成虫になるのですが、ここが問題!すぐに繭の中から出てこないで、しばらく待機しているのです。なにを待ってる?
答えは、猫やその他の動物が通りかかるのを待っているのです。生体が通るときの振動、体温による熱、吐く息からの二酸化炭素をすばやく察知して繭から脱出し、ぴょんと飛び移るわけです。
飛び移られる対象にはもちろん人も含まれます。おまけにこの繭、乾燥や殺虫剤にも強いというからやっかいです。
この卵や成虫までの期間は、温度や湿度などノミにのって好条件下であれば2-3週間ですが、そうでない場合は1年以上もじーっと待機していられるのです。
ネコノミの成虫の生存期間と産卵数
成虫になって猫にぴょんと飛び移ったネコノミは、がっちり猫にしがみついて一生離れません。その寿命は通常3-4週間と言われていて、その間1日に4-20個のの卵を産みます。一生の間に200-400個の卵を産むのです。
猫の体にノミの成虫を1匹見つけたら、その周りにはかなりの数の幼虫やさなぎがいると思ったほうがよいです。
ノミが原因となる猫の瓜実条虫症とは?
虫全般が苦手な人は、もうここまででひえぇぇ・・・って感じだと思いますが、ここからが本題です。気をしっかり持ちましょう!
猫に付く内部寄生虫に関しては別の記事で書きましたが、ここでは瓜実条虫について詳しく紹介します。
都市部でも蔓延するもっとも多い寄生虫症
瓜実条虫は別名犬条虫と言います。といっても宿主は犬だけではなく、猫やフェレットさらには人間にも寄生します。寄生するのは主に小腸です。
衛生状態の良くなった日本では、寄生虫症は減少していますが、瓜実条虫はノミが感染源なので都市部であってもその数は減っていないのが現状です。
瓜実条虫はどうやって猫の小腸に寄生する?
瓜実条虫の成虫は、大きなものでは体長50cm以上にもなります。細ながーいニョロニョロとした形をしていますが、複数の節がつながった構造です。この節のことを片節と言いますが、長いものだと片節が100個以上連なっているわけです。
色は白色または黄白色です。頭部に4個の吸盤があり、これによって小腸にへばりついています。
片節には雌雄両方の生殖器官が一組ずつありますが、ここに産卵孔はありません。どうやって卵を放出するかというと、まず末端の片節を切り離します。
切り離された片節は猫の糞便中に紛れて出てきます。猫のウンチに伸びたり縮んだりする物体を見つけたら、片節である可能性大です!
やがて片節は崩壊してその中から卵嚢という卵を包んだ固まりが出てきます。さらに卵嚢が壊れて虫卵が出現するわけです。
この虫卵をノミが食べると、ノミの体内で瓜実条虫の虫卵が幼虫となります。幼虫を体内に持ったノミを猫が経口することで、感染します。幼虫は猫の小腸で成虫になります。
最終段階である成虫になって寄生される生体を宿主(しゅくしゅ)といいます。そして、成虫になる前段階で必ず必要な生体のことを中間宿主といいます。
この場合、瓜実条虫の宿主は猫であり、中間宿主はノミです。
瓜実条虫症の発見と診断は?診察を受ける際にしたいこと
瓜実条虫に寄生されても、多くの場合猫自身は無症状です。ただ、子猫の場合は下痢を起こすことも少なくありません。特にたくさんの寄生を受けると激しい下痢をして体力を奪ったり脱水を起こすことがあるので注意が必要です。
大人の場合は、先にも書きましたが糞便中に片節を見つけることで飼い主が発見することが多いです。私は愛猫のお尻の穴にピロピロ動いている片節を見たことがあります!
また、便の表面に白色のゴマ粒状のものが見られることもあります。水分を吸うと数ミリになることもあります。そのようなときは動物病院で糞便検査をしてもらいましょう。
片節を採取して水中保存(冷蔵が望ましい)の上持参すると良いらしいですが、そこまでしたことはありません・・・。
病院では、猫の肛門にセロハンテープを押し付けて卵虫や卵嚢を採取することもあります。人間でもギョウ虫検査のときにやる「アレ」です。
ノミの駆除と瓜実条虫の徹底駆虫はできる?
瓜実条虫の予防は、とにかくノミの徹底駆除です。そして、感染した場合は駆虫薬での治療になります。動物病院で処方してもらいましょう。
猫に寄生した瓜実条虫の駆虫
病院で瓜実条虫症と診断されたら駆虫薬を処方されます。プラジクアンテルという薬が一般的です。条虫をやっつけるしくみは、寄生虫の体表の細胞を変化させて殺します。
また、寄生虫がブドウ糖を吸収するのを妨げたり、けいれんを起こして寄生虫を麻痺させる効果があります。
製品名としては、ドロンタール・ドロンシット(錠または注射液)・プロフェンダースポット・モナリート(滴下剤)があります。
猫に付いたノミを駆除する方法
さて、次に感染源となるノミを断ちましょう!ただ、ノミは卵→幼虫→さなぎ→成虫と完全変態を行うので、そのすべてを駆除する必要があります。
原始的な方法ですが、専用のクシを使えば簡単にとれます。むかーしせっせと保護した猫にやってました。ただ、注意点は、ノミは絶対につぶさないこと!卵が当たり一面飛散してしまいますよー。粘着テープにつけて焼却処分するなど、気を抜かずに!
猫を洗うことで、成虫だけでなく体表に付いた幼虫やさなぎも洗い流すことができます。ただ、シャンプーしているときに、洗いにくい頭部や顔にノミが移動して、洗い残してしまうこともあります。
これが今一番一般的です。スポットタイプは使いやすく、さまざまなメーカーから販売されています。製品によって効果が違うので、何がどう効くのか、どのくらい持続するのか調べた上で使いましょう。
よく使われる駆虫薬について基礎知識を持っておこう
一般的に使用されるノミの駆虫剤を紹介しておきます。医薬品なので基本的には動物病院での処方となります。
そのときの猫の状態や動物病院によっても使う薬が違うので、どの薬が何の寄生虫に効くのかは知っておきたいです。
個人輸入を含むインターネットで購入もできますが、副作用がまったくないとは言えません。
ご使用になる際は十分注意の上、自己責任でお願いしますね。
フロントライン・フロントラインプラス
一番有名なノミダニ駆除薬ではないでしょうか。フロントラインはドイツに本拠を置く製薬会社ベーリンガーインゲルハイムの子会社メリアルの製品で、日本では日本全薬工業(ZENOAQ:ゼノアック)が販売しています。
ノミとマダニに効果があります。さらに、ノミの成虫だけでなく卵や幼虫の成長を抑制する成分を加えたのがフロントラインプラスです。これはハジラミにも効果があります。
フロントラインは生後12週齢から、フロントラインプラスは生後8週齢から使用できます。
レボリューション/ストロングホールド
レボリューションは現在動物病院でもっとも使われている駆虫剤かもしれません。猫の保護に携わっているボランティアもよく使います。
ノミの成虫だけでなく、虫卵や幼虫に作用して成長を妨げる効果もあります。また、ミミヒゼンダニ、内部寄生虫のフィラリア症、回虫にも効きます。
生後6週間から使用できます。
レボリューションとストロングホールドは同じ製品
日本ではレボリューションという製品名で知られていますが、同じゾエティス社が販売するストロングホールドは効果、成分ともに差異はありません。
どういうことかというと、ストロングホールドはレボリューションのヨーロッパ向けの商品なのです。個人輸入でストロングホールドを購入している人も多いです。
レボリューションプラスでマダニにも効果が!
ノミの成虫の駆除や卵、幼虫にも作用することや、ミミヒゼンダニや回虫駆除、フィラリア症予防など多数の寄生虫を駆虫できるので、重宝されてきたレボリューションですが、マダニに対しては効果がありませんでした。
しかし、成分を加えることによってマダニの駆虫もできるようになっています。それがレボリューションプラスという薬です。同じように、ストロングホールドプラスもあります。
生後8週齢以上に使用できます。(体重1.3㎏未満は使用不可)
ブロードラインは条虫駆除も!
フロントラインと同じ会社のお薬です。フロントラインに内部寄生虫の殺虫成分を加えていて、ノミやマダニの駆除、ノミ幼虫の発育を阻害しノミの寄生を予防と、フィラリア予防、猫回虫・猫鉤虫や条虫類の駆除にも効果があります。
ただ、条虫類の中でも効果が認められているのは、瓜実条虫・猫条虫・多包条虫です。ノミが媒体となる瓜実条虫を一緒に駆虫できるのは嬉しいですね。
生後7週齢から使用できます。
上にあげた薬剤のまとめです。
製品名 | 効果 | 月齢制限 | 有効成分 |
---|---|---|---|
フロントライン | ノミ・マダニの駆除 | 12週齢から | フィプロニル |
フロントラインプラス |
ノミ・マダニ・ハジラミの駆除 |
8週齢から | フィプロニル・メトプレン |
レボリューション |
ノミ・ミミヒゼンダニ・回虫の駆除 |
6週齢から | セラメクチン |
レボリューションプラス |
ノミ・ミミヒゼンダニ・マダニ・回虫・鉤虫の駆除 |
8週齢から |
セラメクチン・サロラネル |
ブロードライン |
ノミ・マダニ・回虫・鉤虫・条虫の駆除 |
7週齢から |
フィプロニル・メトプレン |
ネット通販でも購入できます。初回ご使用になるときは、獣医さんの処方が望ましいです。特にレボリューションなどフィラリア予防効果のある薬剤を使うときは、感染していないことを確認の上使いましょう。
環境中にいるかも?部屋からノミを排除しよう
せっかく猫についたノミを駆除しても、生活環境の中に潜んだ成虫や卵、幼虫、さなぎを駆除しなければいたちごっこです。
ノミは真冬(1~3月頃)を除いて年中発生し、特に多いのは7~9月です。卵は温度27℃湿度50%で孵化します。その後2回脱皮して4-5mmの第三幼虫になり、さなぎになります。幼虫の好む条件は、温度18-27℃・湿度75-85%です。
さなぎから成虫へう化するための好適条件は、温度24-32℃・湿度78-80%です。この条件が満たされないときは、1年近くさなぎのまま過ごすことができます。
基本は徹底的に掃除機をかけること!
卵や幼虫、さなぎはホコリに紛れて部屋にあるかもしれません。掃除機で吸いとることが基本です。猫がふだん寝ているベッドやくつろいでいる場所、カーペットやソファ、ホコリがたまっている家具の隙間など、徹底的に掃除機をかけましょう。
吸いとったゴミはすぐに処分することも忘れないでください。掃除機のゴミパックは殺ダニ用を使うのもおすすめです。掃除が終わった後、掃除機の吸いとり口に殺虫剤をかけておいたり、フィルターを洗浄すれば尚GOODです!
1ヶ月くらい続ければ、効果はかなり高いはずです。
バルサンは後処理が面倒なのとデメリットも
バルサンを焚いて部屋中いっきにやっつけたいところですが、人も猫もいる場所ではできません。それに、やっぱり薬剤ですからその後の処理がたいへんです。
実は一度使ったことがあります。保護した猫が入院している間に焚いたのですが、床を掃除するのはもちろん、食器を全部水洗いしたり、布団やシーツを洗ったり・・・。
メーカーの説明では、食器は気になるときは水洗い・布類はブラシをかけたり掃除機で吸う等々書いてありますが、なんだか気になったので。
それに、成虫は殺せますが幼虫は弱らせる程度で、2-3週間後に再度行う必要があります。その手間を考えたら、こまめに掃除機をかけたほうが良いと思うのですが。安全性の面でも。
薬剤を使わない電子ノミとりホイホイも活用
ノミの成虫をキャッチする薬剤を使わない「ノミとりホイホイ」を使うのも手です。ただし、これはあくまで部屋にいるノミです。猫の体表にいるノミを取ることはできませんよー。
青色のLEDでノミをおびき寄せ、粘着シートでがっちり捕獲するというもの。レビューでは設置場所や設置方法によって効果はマチマチのようですが、青い光に害虫が集まってくることは確かなようです。
瓜実条虫の運び屋『ノミ』まとめ
外から保護した猫の場合、かなりの高確率でノミに寄生されています。完全室内飼いだからといって安心はできません。庭に面した窓越しに、外の猫からノミが移ることも考えられますし、人間が外から運んでしまうこともあります。
どちらも実際に私の実家で起きたことです。
ノミがいた場合は、猫の体表にいる成虫を駆除することはもちろん、環境中に落ちてしまった可能性のある卵や幼虫、さなぎも徹底駆除しましょう。
そして必ず動物病院で検便をしてもらってください。瓜実条虫症に感染しているかもしれません。成猫であれば無症状で過ごすことも多いですが、大量に寄生されると下痢をしたり体長悪化につながります。
それに、お尻からうごめく片節を見るのは嫌ですよね・・・。それ以上にお腹の虫に寄生されていることは、猫の腸内環境にとって良いことはありません。しっかり駆虫しましょう。