子猫の下痢が治らない!酷くなる!それってコクシジウム症かも?
ツイート子猫は体調を崩すとすぐに下痢をします。風邪を引いてもウンチが緩くなったり。病気ではなく、離乳食期にはフードの水分や油分によってもお腹を壊します。
その時期にあったフードを与えれば解消されることもありますし、風邪などの感染症が治れば下痢も治ります。回虫や条虫のせいであれば駆虫ができれば治まります。
ただ、稀にいつまでも軟便が治らなかったり、さらにひどくなって水様便や血便にまで悪化してしまうこともあります。その原因が、コクシジウムという原虫症のことも!
子猫が感染すると大変なコクシジウムとは?
猫のお腹に棲む寄生虫は、よく知られているのが回虫や瓜実条虫(サナダムシ)、郊外ではマンソン裂頭条虫なんていう大型のものもあります。
これらは成虫自体が肉眼で確認できますし、条虫は糞便中に切り離された節(片節)が紛れていることでわかることもあります。
ただ、コクシジウムはとても小さくて、顕微鏡でなければ発見できないのです。コクシジウムは原虫とよばれるグループに属する寄生虫です。
原虫ってなに?
原虫とは、細胞一個でなりたっている原生動物です。ゾウリムシなどと同じです。その繁殖方法は細胞分裂によって増えていきます。
そのため、環境が整えばどんどん増えていってしまうやっかいな寄生虫でもあります。原虫感染症を放置していると、体内で増殖して症状がどんどん悪化してしまうこともあるのです。
コクシジウムってなに?
そんな原虫の一緒がコクシジウムです。コクシジウムとは、原虫を分類したときのグループの名前です。コクシジウム類と呼ばれます。
そのコクシジウム類はさらにいくつかのグループに分かれます。原虫症といってもたくさんの種類があるのですね!一般的にペットとしての猫に見られるのは、イソスポラ症です。
ただ、動物病院では単にコクシジウム症と言われることがほとんどです。ではなんで説明したかというと、同じ原虫、コクシジウムの中でも、私たちに関係する種類もあって、違いがあるからです。
猫や犬に寄生するイソスポラは宿主が厳密に決まっています。イソスポラの中にも多種類あって、猫に感染する種もいくつか分かっています。
ただ、猫に寄生する種が犬や人間に移ることはありません。これを寄生虫の宿主特異性といいます。
人間に移るコクシジウム
コクシジウム類の中でも人獣共通感染症になるものもあります。クリプトスポリジウムはコクシジウムの一種ですが、それほど宿主特異性が厳密ではありません。例えは、小型クリプトスポジウムという種類は、ほとんどの哺乳類に感染します。
コクシジウム症の症状は?
コクシジウム症の症状は、水様性の下痢です。重症になると粘血便になることもあります。その他の症状としてはこれらの症状が起こることもあります。
- 発熱(高熱ではない)
- 食欲不振
- 消化不良
- 元気がなくなる
- 粘膜が白くなる(貧血)
目に見えて衰弱しているようだったり、体重が減る、見た目に酷く痩せてきた場合はかなり危険です。これらの症状は生後1ヶ月から半年くらいまでの子猫によく見られます。
感染後3週間もすれば症状は軽くなってきますが、体力のない子猫はそれまでに命を落としてしまうこともありますので、おかしいなと思ったら動物病院へ行きましょう!
成猫が感染した場合は、あまり症状が出ません。ただ、糞便中にはオーシストとよばれる感染源が排出されます。多頭飼いの場合などは、他の猫に移ることがあるので注意が必要です。
コクシジウムの感染はどうやって起こる?
コクシジウムは経口感染です。感染した猫が排出した便の中には、オーシストと呼ばれるコクシジウムの卵のようなものがあります。それを口にして感染します。
または、これを食べたネズミを捕食することによっても感染します。ネズミは待機宿主となるわけです。
ところで、糞便中に排出されたばかりのオーシストには感染力はありません。外界で発育して成熟します。この成熟したオーシストを口にすることで感染します。
どのくらいで成熟するかというと、温度によって違うそうです。おおよそですが、20℃だと40時間、25℃で24時間、30℃で12時間くらいです。
子猫のコクシジウム症の診断と治療について
寄生するのは主に小腸粘膜上皮細胞です。コクシジウム原虫自体はほとんど病原性はないといいますが、幼猫がたくさんのオーシストを摂取してしまったりすると症状が出ます。
また、免疫力が落ちていたり、ストレスにさらされたり、他の感染症にかかっているときは重症化しやすいので注意が必要です。
保護猫の多くは、決して環境の良い場所にいたとはいえません。そのせいか、ボランティアをしていると症状が強く出て体力を消耗し、危険な状態になる子猫にも遭遇します。
一度の検便では安心できないことも
コクシジウムの診断は糞便検査によって行います。
猫を保護したら検便をします。そのときにコクシジウムと診断されなかったからといって安心できません。寄生虫は、宿主が弱っているときは自分も身を潜めて活動を抑えていることが多いようです。
レボリューションして回虫が出たー、次に条虫が出たー、もう大丈夫!・・・と思っていたらなかなか下痢が治らない。再々検便してコクシジウムが!ということも珍しくないのです。
コクシジウム症の治療は長引く!?
コクシジウムの駆虫は、一般にサルファ剤という薬を投与します。でも、これすっごく不味いらしいのです。ほとんどの猫は、口の中に入れた瞬間あわあわ~!口中泡だらけになります。
少し前まではアプシードシロップという液状の薬がありました。白いねっとりした薬で、2週間くらい飲ませる必要があったので大変でしたが、泡だらけになるよりずっとマシでした。でも、製造中止になってしまいました。
これまで、コクシジウムの完全駆虫には根気が必要でした。駆虫薬がコクシジウムの特定のステージにしか効かないため、上記のようにお薬を飲む期間が長かったのです。サルファ剤も同じです。
ところが、コクシジウムのほとんどのステージに効くバイコックスという薬が登場しました。でも、問題点が・・・猫用に認可された薬ではないのです。
コクシジウム駆虫薬バイコックスとは
バイコックスは家畜用の駆虫薬です。欧米では早くから犬猫にも使用されているようですが、日本では使う獣医さんが少なかったのです。
現在はバイコックスを使う獣医さんも増えています。うちのかかりつけの獣医さんも使い始めました。
バイコックスの最大の特徴は、コクシジウムの広いステージで効果を発揮するので、投与する回数がぐっと減りました。1度の投与で落ちてしまうこともあります。
でもね、豚用なんですよ・・・。
日本で認可された犬用プロコックスとは
2017年に犬用のコクシジウム駆虫薬が販売されました。その名も『プロコックス』。猫に使われるバイコックスの成分はトルトラズリル。プロコックスはトルトラズリルに加え、エモデプシドが入ってます。
犬回虫・犬鉤虫・犬鞭虫の駆虫もできるという製品です。エモデプシドはプロフェンダースポットにも配合されています。
最近、猫のコクシジウム症の治療に使う獣医さんもいます。
猫のコクシジウム症の予防と再感染防止
コクシジウムの予防といっても、特にないのが現状かと思います。トイレは常に清潔に!・・・くらい?ただ、大事なのは早期発見・早期治療を心がけることです。
感染が分かったら、駆虫剤の投与でしっかり落としましょう。そして、特に大事なのが糞便処理です。完全に駆虫で切るまでは毎日砂を取り替えましょう。
子猫であれば、それほど大きなトイレ容器は必要ないので、百均のトレーに薄く砂を敷くくらいで良いと思います。またはダンボールにペットシーツを敷くとか。
飛び散り防止に回りを囲うのもおすすめです。トイレ容器はその都度消毒しましょう。
コクシジウムは一般的な消毒液は効果が薄く、家庭でできる最善の方法は熱湯消毒です。ケージなどそれが無理な場合はスチームクリーナーが便利ですよ。
子猫のコクシジウム症まとめ
コクシジウムは感染力は強くても、病原性としてはそれほどではありません。健康な成猫であれば体力免疫力で抑え込んで、症状があらわれない方が多いです。
子猫の場合も、特に症状がなくても検便したら見つかった、ということも少なくありません。ただ、幼猫で体力のない場合に多量の感染があると重症化します。
以前はコクシジウムの治療には決定的な効果のある薬がなかったのですが、最近はバイコックスまたはプロコックスという薬で駆虫効果も高くなっています。
猫がコクシジウムに感染していることがわかったら、獣医さんの指示どおりにしっかり投薬をして、再感染または他の猫への感染防止をしっかり行いましょう。