猫のマンソン裂頭条虫ってどんな寄生虫?人間に感染する?
ツイートマンソン裂頭条虫という寄生虫を聞いたことありますか?保護活動をしているボランティアにはよく知られていますが、一般ではあまり馴染みのない寄生虫だと思います。回虫症や瓜実条虫ほど知られていない理由は、都市部には少ないせいかもしれません。
マンソンは、特に郊外など自然豊かな環境で暮らす猫に多いのが特徴です。この記事では、マンソン裂頭条虫について、その形態と生活、症状と駆虫について詳しく説明します。
マンソン裂頭条虫は大型の寄生虫!どのくらい大きいのか
猫の寄生虫というと、ノミ・ダニなど体の表面に付く外部寄生虫と、体の中に寄生する内部寄生虫があります。体内に棲む寄生虫は、外から見ただけではわかりませんよね。でも、たまーにお尻からひょっこり顔を出して飼い主さんがびっくりすることもあります。
はっきりいって気持ちのよいものではないです。でも、生き物と寄生虫は切っても切れない関係にあります。猫の腸内環境の健全化のためにも、寄生虫はやっつけておきたいです。
マンソン裂頭条虫ってどんな虫?
マンソン裂頭条虫は長いひも状の寄生虫です。平べったいので『きしめん』みたいなんてよく言われます。実際に見てしまうとしばらく食べられなくなりそうですが・・・。
寄生するのは小腸です。長いもので1mになるので、かなりの大型寄生虫です!そんなものが猫のお腹にいると思うとぞっとしますね。
マンソン裂頭条虫は雌雄異体です。オスとメスがいるんですね。通常は成長した成虫はメスの方が大きいです。
形は『きしめん』みたいと言いましたが、複数の節が一列につながった構造をしています。この節を片節といい、それぞれ雌雄の生殖器官が存在します。これは瓜実条虫など他の条虫も同じです。
各片節にある生殖器が産卵をします。虫卵はまん丸ではなく、ラグビーボールのような形をしています。検便でこれが検出されると感染と診断されるわけです。
マンソン裂頭条虫の虫卵
長径50-70μm 短径30-45μm ラグビーボールみたいな形
この虫卵を猫が食べても感染するわけではありません。ではどうやって猫に感染するかと言うと、途中に中間宿主と言う他の生物が必要なのです。
マンソン裂頭条虫の猫への感染経路は?
寄生虫が成虫になって動物に寄生するまでの過程には「直接発育」と「間接発育」があります。直接発育する寄生虫は、虫卵を猫が食べることで感染します。回虫がこれです。
対して間接発育とは、寄生虫の成虫が寄生する宿主とは別に、幼虫も他の生物に寄生する発育の仕方をするタイプです。
わかりやすい例では、瓜実条虫は虫卵をノミが食べて、ノミの体内で幼虫になります。そのノミを猫が食べることで感染します。このときノミも幼虫の宿主になっているわけですが、成虫にはなりません。
まとめるとこうです。
- 寄生虫が寄生する対象→宿主(しゅくしゅ)
- 成虫が寄生する宿主→終宿主
- 幼虫が寄生する宿主→中間宿主
マンソン裂頭条虫も、中間宿主を必要とします。それも2段階必要なのです。
猫がカエルやヘビを食べることによって感染する
マンソン裂頭条虫はこんなかんじで成虫になります。
感染猫糞便が環境中に放出され、それを水中のケンミジンコが食べます。このときケンミジンコは第一中間宿主です。そのケンミジンコをカエルが食べます。カエルは第二中間宿主。
そして!幼虫を持ったそのカエルを猫が食べることで感染します。めでたくマンソンは猫の小腸で成虫となるわけです。まったく嬉しくないですけどねー。
さて、ここでヘビについてですが、この場合ヘビは中間宿主とは言わないんです。幼虫に寄生されたカエルを食べると、ヘビの体内に幼虫は移動します。そこでは幼虫に何も変化が起きずにただいるだけ。
言ってしまえば、マンソンの幼虫にとっては、ヘビはいてもいなくても良い存在です。こういった対象を待機宿主といいます。
でも、こうした待機宿主を猫が食べることによってマンソンに感染してしまうことは覚えておきましょう。カエルだけ気をつけていればいいというわけではないので。
マンソン裂頭条虫に感染すると猫に現れる症状は?
主な症状は下痢です。ただ、無症状の猫が多いと言われますし、実際に感染猫を見てきた経験からもそう思います。それは、マンソンに感染している猫ってある程度成長した子が多いからかな・・・と個人的に推測しています。
今まで感染していたのは、外から保護した子がほとんどです。それに、都市部で保護して拙宅に来た子では経験はありません。
カエルを捕食することで感染することを考えても、一生懸命、そして力強く生き抜いてきた子が寄生されているのですものね。ただ、あまり嬉しくない症状(?)に出くわすこともあるのです。
猫のお尻からにょろにょろと顔を出すことも!
マンソン裂頭条虫に限ったことではありませんが、小腸に寄生する虫が猫の肛門から顔を出すときがあります。なんだろうと思って引っ張ってみたらプチッとちぎれた・・・なんて経験をした飼い主さんもいます。
私はマンソンではないけれど経験があります・・・。
猫を保護したら必ず糞便検査をしましょう
外から猫を保護したら、必ず検便しましょう。健康そうに見えても、まず動物病院で健康診断を受けることをおすすめします。ノミ・ダニなどの駆虫は市販の薬で対処できますが、内部寄生虫はやっかいです。
それに、複数の虫に寄生されていることも珍しくありません。以前保護した猫は、回虫・瓜実条虫・マンソンに寄生されていました!
どんだけ腸内環境が荒れていたのか気の毒になります。でも、彼も下痢など不調はありませんでした。むしろふっくらしていたくらい。
寄生虫は栄養源である宿主に悪さをしないよう上手く生きています。ただ、あまりに多くの寄生虫に付かれてしまうと、猫にとっても良くないです。栄養を横取りされていることは事実ですから。
マンソン裂頭条虫の駆虫と再感染予防
条虫の駆虫にはプラジクアンテルという薬品を使います。製品名では、ドロンシット。薬剤の形状は、錠剤と注射液があります。
マンソン裂頭条虫は大型ということもあって、なかなか手強い相手です。薬も瓜実条虫の場合に比べると、約6倍の量が必要になってきます。
ドロンシット錠を例に取ると、瓜実条虫の駆虫の場合は1/2錠を飲みますが、マンソンは3錠です。錠剤もあんがい大きいのですよ。これ、3つも飲ませるのたいへーん!とボラさん達が嘆いていました。
今は、動物病院でチックンと注射を打ってもらうことが多くなりました。
下痢の症状があるときは下痢止めを処方されることもありますが、きちんと駆虫できれば自然に治ってきます。体力がある猫であれば、様子をみてくださいと言われることも多いです。
マンソン裂頭条虫の再感染予防は、カエルやヘビを食べない!これに尽きます。そのためにも、完全室内飼いをおすすめします。寄生虫だけでなく、他の猫と接触する機会が多いと感染症にかかってしまうリスクも高いからです。
マンソン列頭条虫は人間にも感染する?
マンソンは人間にも感染します。ただ、猫でそうであるように小腸に寄生して成虫にまでなることは稀で、多くは待機宿主として体内に保有している状態です。
その部位は主に皮下や筋肉の間です。ぞっとする話ですが、人間に感染するケースは限られていて、カエルやヘビなどの中間宿主からの感染です。
または、第一中間宿主となっているケンミジンコを含む水を飲んでしまった場合にも感染します。どっちにしろ、猫の糞便中の虫卵から人間に感染することはありません。
ということは、例え感染猫がいて猫のトイレに虫卵があっても、他の猫に感染することもないと考えられますね。でも!トイレは常に清潔にしておくことは大切ですから、お掃除はマメににましょうね。