子猫が感染すると発育不良にも?人にも移るジアルジア症とは?
ツイート子猫がひどい下痢症状を起こすジアルジア症という消化器系の感染症をご存知ですか?ジアルジア症は人間の感染症としても知られていますし、犬を飼っている人は馴染みがある寄生虫症かもしれませんね。
このジアルジア症、猫にもあるんです。この記事では、その症状と治療法、予防について紹介します。
ジアルジア症の症状と原因は?人間が感染したら?
ジアルジアは、脊椎動物の腸管に寄生する鞭毛虫というグループに属する原虫です。ジアルジアには多くの種類があり、人や他の哺乳動物に寄生するのはランブル鞭毛虫というものです。
人のジアルジア症の原因はランブル鞭毛虫
ジアルジアの一種であるランブル鞭毛虫は、人間の病原体であることで知られていますが、人以外の哺乳類にも寄生します。
寄生虫には、宿主が厳密に決まっているものも多いのが特徴ですが(宿主特異性)、ランブル鞭毛虫は人・猫・犬・羊・ビーバー・牛・鹿など、多くの感染例がみられます。
ただ、ランブル鞭毛虫にはいくつかの遺伝子型がわかっていて、それによって分類すれば宿主特異性があります。現在8つの遺伝子型に分類されていますが、その中で猫を宿主とする種はこちらが知られています。
- Giardia duodenalis(AⅠ)
- Giardia enterica
- Giardia cati Deschiens
ジアルジアについては、種の特定や分類において紆余曲折があったようです。その辺は専門的になるので無視して良いのですけどね。和名を使っていないので覚えられないし・・・。
齧歯類だけに寄生するもの、アザラシだけに寄生するもの、犬だけ猫だけという種類もあるということです。ただ、猫を宿主とするGiardia cati Deschiensが犬に感染した例もあるので油断は禁物です。
人でのジアルジア症の症状
人間が感染した場合、激しい下痢を伴う胃腸炎を起こします。感染すると7日から10日程度の潜伏期間を経て症状が出ます。通常は2-4週間ほどで症状は治まりますが、場合によっては長引くこともあります。
世界的に見てもよくある感染症といえます。特に熱帯・亜熱帯地域で感染率が高く、現在の日本人の感染も多くが海外旅行者といわれます。
感染源は、ランブル鞭毛虫のシストと呼ばれる目に見えない感染源を経口摂取することです。生水・生野菜・果物が感染源となることが多いです。
また、塩素にも抵抗性があるので水源地が汚染されていたら集団感染することもあります。
猫のジアルジア症の感染経路は?集団飼育で発生しやすい
猫や犬において、国内でのジアルジア感染はブリーダーやペットショップなので多数飼育された場合に集団発生を起こすことが多いと言われています。
では、ジアルジアはどういった経路で猫に感染するのでしょうか?
ジアルジアのシストは感染力が強い
ジアルジアには『栄養型』と『シスト』という発育段階があります。シストとは、一般的にまだ幼い状態で厚い膜をかぶって一時休眠状態になった状態を指します。
栄養型は感染猫の下痢上の便に排出されますが、環境の変化に弱いため短時間で死滅します。シストは下痢便をしていない状態の固形便に排出されます。
ジアルジアのシストは、成熟した状態で糞便に排出され、その感染力も強いので少量のシストを経口摂取しただけで感染してしまいます。
このような理由から、多数で生活している猫に集団感染が起こりやすい寄生虫症といえます。
猫がジアルジアの感染した場合の症状は?
実は、猫がジアルジアに感染しても症状が出ないことが多いのです。劣悪な環境であったり、強いストレスを受けて免疫力が落ちていたり、消化器系の疾患にかかっている場合には下痢が起こることもあります。
気をつけなければならないのは子猫が感染した場合です。
子猫がジアルジアに感染したら?
体力のない子猫が感染すると、水様性や粘膜性の激しい下痢を起こします。嘔吐をすることもあります。通常は感染後1週間以内に下痢が始まります。
食欲の低下はあまりみられませんが、体重が減少していきます。放っておくと発育不良を起こしてしまうこともありるので要注意です。
猫のジアルジア症の診断と治療は?
ジアルジアの診断は糞便検査が基本ですが、検出しにくいという欠点があります。先に書いたように、栄養型は環境が変わると短時間で死滅してしまいます。新鮮なウンチで検便をする必要があります。
この場合の検査方法は直接塗抹法で行います。生理食塩水で希釈して顕微鏡で見る検査です。ジアルジアの栄養型があれば観察できます。
ただ、シストはこの方法ではほとんど検出できないそうです。その場合は、沈殿法のひとつ、MGL法という検出方法でシストを集めて調べます。
キットを使った検査も登場!
最近はキットを使った検査を行う動物病院も増えてきています。これは、検体中に溶け出してくるジアルジアの抗体を検出するもので、顕微鏡で栄養型やシストが見つからなくても、かなり正確に診断できるようです。
ただ、お値段がちょっとお高め。キット自体が高いのでしょう。目安として1回3,000円くらい。
猫のジアルジアの治療
ジアルジアの治療は投薬が基本です。メトロニダゾールという薬品が有効とされています。製品名ではフラジールやアスゾール。
これ、とっても苦いらしいので飲ませるのは大変です。この薬は、免疫調整作用があるといわれていて、猫の歯肉口内炎にも使われることがあります。
- 神経性の病気
- 傾眠
- 虚弱
- 肝臓病
- 食欲不振
対症療法で体力をつける
下痢の症状がひどいときは下痢止めや、脱水を起こしていれば補液といった対症療法も必要になってきます。ジアルジア症は免疫力の弱ったときに発症します。
症状の悪化を抑え、改善していくことはとても重要です。
猫のジアルジア症の予防と再感染防止
ジアルジアはシストを介してあっという間に蔓延します。感染ペットの多くが、ペットショップやブリーダーから購入した猫や犬に多くみられるのも多頭飼育のためと推測されています。
例え母猫がジアルジアに感染していても、大人であれば症状がほとんど出ないし、販売時に検便を実施していても、検出しにくいのもやっかいなのです。
多頭飼育の場合に他猫に感染させない予防法
新しく迎えた子猫は必ず糞便検査をしましょう。それまでは部屋を分けるなどして、先住猫と接触させないことをおすすめします。一通りの検査で陰性と出るまでの辛抱です。
もしジアルジアに感染していたら、駆虫できるまで分けて生活させましょう。シストはトイレの共用だけでなく、体についたものを毛繕いで口にしてしまうことも十分考えられます。
感染猫のトイレの消毒もお忘れなく。糞便中には成熟したシストが排出されています。
ジアルジアの消毒法
ジアルジアのシストは塩素系の消毒薬にも抵抗性を持っています。ただ、熱と乾燥に弱いので、熱湯消毒をしてしっかり乾燥させることがポイントです。
・ダンボールを用意して使い捨てにする
・トイレ容器に厚手のビニール袋を被せて使用後に袋ごと捨てる
糞便はすぐに処理することは基本ですよー。
シストは65℃で5分、100℃で2分で死滅するといいます。乾燥処置では処置後2分で78.8%、30分後ではほとんどが死滅した報告も。
ケージや床はスチームクリーナーが便利です。洗浄した後はしっかり乾燥させることをお忘れなく。
猫のジアルジア症まとめ
猫のジアルジア症は、犬のそれと比べれば少ないといえますが、感染率はけっして低いわけではありません。しかし、案外知られていないのも事実です。
子猫の下痢が治らない、または良くなったり悪化したりを繰り返すなどの症状があるときは、動物病院で検査をしてもらいましょう。
猫のジアルジア症の原因となるランブル鞭毛虫の中には、人に感染するものもあります。猫のトイレを掃除したあと、猫と触れ合った後はしっかり手を洗いましょう。
先住猫がいる場合は、しばらくの間は生活空間を別にしましょう。人間を介して感染してしまうこともありますので、注意してください。
でも、しっかり治療をすれば決して怖い病気ではありません。駆虫薬と対症療法で体力をつけ、免疫力もついてくればすっかり元気になります。